残酷なこの世界は私に愛を教えた




その後、私たちは色々なパターンを試してみた。すると声が出るときは隼人先輩と二人の時だけだということが分かった。



中田先輩一人の時は勿論、隼人先輩と中田先輩が並んでいる時さえも声は出なかった。



「こんなことってあるんだな……」



「なんか隼人ずりー」



先輩たちがしみじみと言う。



「ま、とにかく声が出たってことでお祝いしに行こ」



「俺も行っていいー?」



「だめ。お前が来たら高瀬さん話せねえだろ」



「うっ。しゃーない、今回は引いてやるよ!」



「今後もお前はついてくんな」



「えっ、ひど! そんなこと言うなら今日も着いてこーかなー?」



「じゃテスト前に勉強教えてやんね」



「ええ、それを出すのはずるいじゃん!」



相変わらずの仲のよさに笑ってしまう。



「じゃ、もう行くから。じゃーな」



「うん、じゃね、愛珠ちゃん!」



手を大きく振る中田先輩にお辞儀をして、私達は校門を出た。



「どこに行くの?」



「ねーちゃんの店。やだ?」



「ううん、むしろそこがいい」



「よかった」



ニコッと先輩が笑う。


ああ、この笑顔好きだなあ。凄く安心する。
心の中でそう思った。



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