残酷なこの世界は私に愛を教えた
「わあ、見て見て! 凄い高い!」
「人が小さい……」
「だね。うわぁ……すっごい綺麗……」
ゆっくりと上昇していく観覧車と同じように、景色は荘厳さを増していく。
住宅地や遠くの山が一度に目に入る。
――ギィッ
空間が揺れて、隼人を見ると私から離れて斜向いになるように移動していた。
「隼人?」
えっ……もしかして、不快にさせるようなことしちゃったかな?
嫌われたのだろうかと、急に不安になる。
「あ、ううん違うよ? 愛珠のこと嫌ってる訳じゃ無いから」
「うん……?」
少しの間、そのまま互いに違う方向の景色を眺めていたけれど。
やっぱりせっかく二人で乗っているんだから、一緒の景色をみたい。近くに居たい。
なんて、贅沢かな?
静かに窓の外を眺める隼人に声を掛けるのは、勇気がいる。
「……そっち、行ってもいい……? ………………あっ、嫌なら全然こっちでも良いんだけど」
「あ、いや……嫌って訳じゃねえんだけど……むしろ……」
語尾が聞き取れず「え?」と聞き返すと、
「分かった、こっち来ても良いけど」
と私を促す。
言われた通りにそちらに行くと隼人の腕に引っ張られ、次の瞬間、私は隼人の膝の上に座っていた。
「えっ? 隼人?」
「この体制で良いならこっちでいいよ」
私の体に腕を回しながら言う。
「えっ、と」
結果、隼人に後ろからハグされる形になっていた。
背中に隼人が顔を埋めるのが分かる。
心臓が跳ねる。
心拍数が上がっていることは自分でも分かった。
この心臓の音、隼人にも聞こえちゃいそう……。
どこかくすぐったいような、甘い感覚。この感情はなんて言えば良いのだろう。
初めての淡い感情を自覚していた。