残酷なこの世界は私に愛を教えた
「あー……可愛い……」
私の背中で彼がボソッと言う。彼の吐息が背中に当たることが分かるほどに私達は密着していた。
そそそそれは、何がですか!?
この狭い空間には可愛らしいキャラクターも、綺麗な女の子も居ない。
勿論、眼下に広がる景色にも、可愛さを確認出来る程の大きさの物は無いし……。
あ、空を飛ぶ鳥とか!?
いやでも背中の感覚から彼が外を見ていないのは分かる。
ねえ、それ私のことだって天狗になってもいいかな?
ちょっとだけ、せめてこの観覧車に乗っている間だけでも良いから思い上がっても良いですか……?
多分この時の私はまるでロボットのように動きがぎこちなかったと思う。
心臓の高鳴りと隼人の息づかいと隼人の体温を感じていた。