残酷なこの世界は私に愛を教えた
長い長い時間が過ぎて元の高さに戻ってきた。
「隼人、そろそろ着くよ……」
精一杯の声を出して言うと、彼は「もう……?」と返事をして私を解放する。
“もう”っていう感覚なんですか!? 私にはめちゃめちゃ長く感じられたんですけど!
ていうかもう何話したか全然覚えてない! 変なこと言ってないよね!?
あーー、もうどうして隼人はこんなに女の子に慣れてるの?
今だって「綺麗だったなー」って言う声、全っ然動揺して無いし!
まさか、私が全然慣れてないのからかったとか!?
そんなことをぐるぐると考えてようやく彼の方を見ると、そこには赤い顔を手で仰ぐ姿があった。
……え。
ええっ!?
平常な間隔を取り戻していた心臓がもう一度メトロノームを失う。
隼人も同じ感覚だったって、思っても良いかな……?
「はい、お疲れ様でしたー!」
元気なお兄さんの声を聞きながら、私は熱くなった顔を手で隠した。