旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
昨日…?と窺いながら顔を見ると、皆藤さんはポカンとした表情で私を見返した。


「ひょっとして、覚えてない?」

「は?何が?」

「いや、あの…」


説明しづらそうに唇を手で覆ってしまう彼。
私はそんな相手に首を傾げ、昨日何があった?と思い出そうとしたんだけど。

思い出すのは、あの濃厚なキスのことだけで。
それを思ったら、また頬が熱くなってきて、つい顔を俯けてしまった。


皆藤さんは私に構わず小さな声で、まあ無理もないか…と呟いてる。

こっちは彼の言う意味がさっぱり掴めず、それよりも早く仕事に行って下さい、と願いたい心境に陥ってしまった。



「まあ…もういいか」


諦めたようにベッドから立ちあがる皆藤さん。
サイドテーブルの上に補水液を入れたコップを置き、何回かに分けて少しずつ飲むのが効果的らしいよ、と教えてくれた。


「ベッドから降りる時は十分気をつけて。足元ちゃんと確認してから歩くんだよ」


さっきの医師と同じように転倒には気をつけて、と言うと部屋を出ようとする。
こっちはやっとホッと出来ると安心し、フ…と小さな息を漏らした。


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