旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
困りながら返事をすることも出来ずに顔を俯けた。
皆藤さんは籠を持ち上げると、「適当に切ってくる」と言い、踵を返して去ろうとした。


「あっ」


ハッとしてもう一度お礼を…と顔を上げる。
でも、歩き始めた彼の背中からふわっとソープの香りがして、ビクッとしたまま固まった。


(今度は…ソープの香り…)


甘ったるくないけどまた別の香りがする。
しかも、それを身に付けた彼自身は、全く気づいてもない感じだ。



(一体、何…?)


本当に仕事へ行ったの?…とまた疑いの芽が伸びてくる。

でも、それを問いただすことも出来ず、気まずい一夜を明かしてしまった___。



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