旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
言葉を奪うように突然彼が紹介した。
私は奪われた言葉の先を言わせて欲しかったのに…と彼を睨み、それを聞いた相手は一瞬息を吸い込み、「えっ!」と言ったまま目を見開いた。

お互い言葉もなく、一瞬だけ店内が静まる。
ジャズの音楽だけが響く店の中で、最初に声を発したのは……



「やだぁー、奥さん!?」


どこの女をナンパしてきたのかと思ったわよぉ〜、と燥ぐ彼女の声に煩そうな表情を見せる皆藤さんは、ぎゅっと私の手を握って店の中に進んだ。


「煩い!黙れ!」


ぞんざいな言い方をしてカウンターチェアに座る。
相手の女性はケラケラ笑いながら、「いいじゃん、別に」と手を振り、私は二人のそんなやり取りを見て、こんなに仲がいいんだ…と虚しく感じた。


(皆藤さんて、この人には素を見せてるのかな)


ふとそんな気がしてしまい、私といる時とは随分違う雰囲気なんだな、と思い知る。


(こういうことが知りたくて、付いて来た訳じゃないのに…)


そう思いつつも逃げ出さずにその場に居座った。
こうなりゃ徹底的に彼の秘密を探ろうと思って。


< 170 / 225 >

この作品をシェア

pagetop