次期院長の強引なとろ甘求婚


 近年感じたことのない大きさで鼓動が音を立てていた。

 こんなに密着していたら、三角先生にもこの激しい心臓の音が伝わっているかもしれない。

 そう思うと、また更に音は増していってしまう。


「うちの親じゃ鑑賞しかできないけど、未久さんならちゃんと管理もできるし、ここのバラたちも安泰だな」

「いえ、そんな……」


 抱き寄せられたときに咄嗟に出した両手が、三角先生の胸元に置くような形で触れている。

 目の前には、首元がVに開いたニットから綺麗に突出した鎖骨があって、また例のごとく私の顔は紅潮していく。

 どこを見たらいいのかわからず視線が完全に不自然に泳いでしまうと、斜め上からふっと笑うような吐息が聞こえた。


「そんな可愛い反応されると、もっといたずらしたくなるんだけど」


 優しい声なのに、言っていることはとんでもなくて、思わず赤い顔で三角先生を真下から見上げてしまう。

 目を合わせるとにこりと微笑まれて、からかわれていると気が付いた。


「だっ、だから、あんまりからかわないでください!」

「からかってなんかないよ」

「からかってます! 私の反応が面白いからって――」


 恥ずかしさを紛らわせるように並べ始めた抗議は、不意に近付き触れた柔らかい感触に止められる。

 それが三角先生の唇だと認識した瞬間、驚きのあまり時間が静止したように体が動かなくなった。

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