次期院長の強引なとろ甘求婚


「でも、ほんとこのお庭にはすごい種類のバラがありますね。やっぱり、十分立派なバラ園ですよ」

「いずれは、全部未久さんのものになるんだよ」

「え……?」


 一通りを堪能し、再び回廊の中で咲き乱れるバラを見上げていた時だった。


 今、何て……?


 聞き間違いとしか思えない三角先生の言葉を、確かめるようにゆっくり振り返る。

 三角先生は端整な顔に微笑を浮かべて、じっと私を見つめていた。

 距離を詰めて、そっと両手を取られる。

 優しく掴まれた手に驚いて、落ち着いていた鼓動がまた大きく音を立て始めた。


「だって、結婚を前提にってことなら、そういうことになるから」


 結婚を、前提に……。


 三角先生の言葉を心の中でオウム返しして、ひとりでに顔が熱くなるのを感じる。

 そんな私の様子を見てか、三角先生はふっと笑って掴んでいる私の手を自分へと引き寄せた。


「あっ……」


 三角先生の突然の行動で、私の体は飛び込むようにして三角先生の胸に触れる。

 私を引いた少し強引な手はそのまま背と腰に回り、三角先生は私を両手で抱き締めた。

< 63 / 103 >

この作品をシェア

pagetop