次期院長の強引なとろ甘求婚


 お店がひと段落する十一時過ぎ――。

 両親にお店を任せ、ひとり店を出る。

 両手に抱えた花束は、あじさいをメインにした青のグラデーションが美しい。

 病院の建物が見えてくると、緊張で鼓動は徐々に速まってくる。


 話したいことって、なんだろう……?


 この花束を作りながら、送られてきたメッセージに書いてあったことをずっと考えていた。

 もしかしたら、この間うちの店に来たあの〝サホ〟さんのことを話されるかもしれない。

 実は、家同士で決められた結婚を進めることになった。

 だから、君とはやっぱりこれで終わりにしたい。

 そんな話をされる可能性は十分あり得る。

 花だけ届けて、樹さんと顔を合わせないで帰ることはできないだろうか……。

 そんな卑怯なことを思いながら、入った病院の総合受付へと足を進めた。


「こんにちは、お世話になっております。フラワーショップ彩花です」


 花束を手に受付に掛ける女性に声をかけると、話が通っているのか「少々お待ちください」と返される。

 受付をする患者さんの邪魔にならないように隅によけて立っていると、横から「ちょっと」といきなり声をかけられた。


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