alice in underland
 チャールズの貸してくれたコートの温もりと丁寧な運転の車の振動が疲労したアリスの身体に心地よった。
「色々ありがとう、チャールズ。でも、ここを抜け出しても私には行くところがない」
「心配しないで。ご両親には、ラースのした事全てを話す。きっと、分かってくれるさ。それにもし、君が家に帰れなくても…」
 チャールズは、そこまで言うと口をつぐんだ。
「帰れなくても…?」
「落ち着くまで僕のところに居れば、いい。もちろん、君が嫌じゃなければだけど」
「気持ちは嬉しいわ。だけど、私はもうレディではないし…」
「いいや、アリス。君はどんな女性もかなわないほどの強くて気高いレディだよ。だけど、まずは、そのレディに素敵なドレスを仕立ててあげないとね。オックスフォード大学の教授が奮発してあげよう」
 アリスは、記憶の中よりも目尻に皺が寄るようになった、しかし夢見るような瞳は変わらないチャールズの横顔を見つめて微笑んだ。
 病室の枕の下の新聞記事はもう必要なかった。
 
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