初恋 ~頑張る女子と俺様上司の攻防戦~
ピピピ。
目覚ましのアラーム。
でも、指一本動かない。

「辛そうだな」
「誰のせいよ」
ギロッと睨んでやった。

「今日は休んでいいぞ。春樹には連絡しておくから」
「いいわよ」
そのくらい自分でできる。

「龍之介は仕事に行くの?」
「ああ。今日は忙しい」
「そう」
「俺は勝手に食べて出るから、未来は寝てろ。昨日は無理をさせたからな」
「わかってるなら何でするのよ」
お仕置きにしても、キツすぎた。

「祐介から電話があったんだ。『未来が辛そうだ。このままじゃどこかに行ってしまうかもしれないぞ』ってね。心配して電話しても出ないし、カバンは置いたままだし。本当に出て行ったと思った」
その時を思い出して不安そうな顔をする龍之介。
「ごめんなさい」
他に言葉がなかった。
「大体、樹里のことだってどうして隠そうとするんだよ」
「ごめんなさい。これからは、ちゃんと話します」
これは本心。
継母だからと言って遠慮するのはもうやめた。

「未来」
「何?」
「昨日は悪かった。でも、不安だったんだ。このまま未来がいなくなるんじゃないかと思ったら、自分が抑えられなかった」
ちゃんと頭を下げてくれた。
「いいの。そんなにイヤじゃなかったから」
「えっ?」
あー、恥ずかしい。

耳まで真っ赤になった私は頭まで布団をかぶってごまかした。
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