初恋 ~頑張る女子と俺様上司の攻防戦~
「そうだ」
何かを思い出したような龍之介。
「何?」
「あの・・・避妊は、してないから」
ええええー。
だって、まだ子供はいいって・・・
「子供なんて、1人も2人も変らないだろう」
「そんなあ、まだ樹里ちゃんとの事だって」
樹里ちゃんとの関係がちゃんとしてから考えるつもりだったのに。
「樹里のことは大丈夫。未来のことをママって呼んでたぞ。『ママに叱られて反省しました。ごめんなさい』って」
「え?本当?』
「ああ」

ウ、ウウ、ウウゥー。
声を上げて泣いてしまった。

「バカだなあ。泣くなよ」
「これはうれし泣きだから」
「うん、知ってる」
ゆっくりと近づいてきた龍之介が私の頭をクシャッと撫でた。

平凡でない初恋をしてしまったのは、自分が一番よくわかっている。
背負うものも守るものも、すでに両手いっぱいに抱えている龍之介に私は何もしてあげられないのかもしれない。
それでも、好きだという気持ちに逆らうことはできなかった。
幸せなことに、龍之介も私のことを求めてくれる。
やっぱり、私は幸せ者だ。

「名残惜しいけれど、仕事に行くよ」
「うん、行ってらっしゃい。私も午後から出勤するつもり」
「無理するな」
「うん」
無理をさせたあなたに言われてもね。

10歳以上年上の旦那様と、高校生の娘。そしていつか生まれる子供達。
不器用な私にはかなりハードルが高いけれど、これも運命と受け入れていこう。

私達は家族になったんだから。
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