神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
*
その起源が蒼き魔狼にあると言われるロータス一族。
このロータス一族は、その忠誠心と力量を歴代のリタ・メタリカ王に買われ、公爵として貴族の称号を与えられていた。
それは、私兵を持てるほどの大貴族であり、この家の出の者は大抵、宮廷でも高い地位に就いている。
古の昔から自在に魔力を操るロータス一族の中にあって、数十年に一度しか現れないといわれる、たぐいまれなる強力な魔力を持つ者、それが大魔法使い(ラージ・ウァスラム)と呼ばれる術者である。
そして、数十年ぶりに一族に誕生した大魔法使いこそ、スターレット・ノア・イクス・ロータス、彼であった。
男性であるにも関わらず、時折美しいとさえ形容される雅な顔立ちをどこか鋭く歪め、蒼いローブを翻し城の離宮へ続く長い回廊を、ゆっくりとした歩調で歩いていたスターレットの背中に、不意に、誰かが息せいて声を掛けてきたのだった。
「スターレット様!!」
それは、よく聞き慣れた少年の声。
蒼銀の髪を揺らしゆっくりと背後を振り返ると、その銀水色の瞳に飛び込んできたのは、明るい茶色の髪と澄んだ青い瞳を持つ、十六、七歳の少年の姿であった。
彼は、ロータス家の当主つまりスターレットの父に拾われた奴隷の子で、現在はスターレットに仕え、日々彼から魔法を学んでいる者。
その名をウィルタール・グレイと言った。
「ウィルト?どうした?」
怪訝そうな顔つきをするスターレットを見やりながら、ウィルタールは、息を整えつつも焦った顔をして言うのである。
「た、た、大変です・・・・!あの、その!あの方が!あの方が城に・・・!エストラルダの・・・・・!!」
「エストラルダ・・・・?まさか、ラレンシェイか!?」
彼の言いかけた言葉の先を察して、スターレットは、いつもは冷静沈着な表情を驚きに変えて、その銀水色の両眼を大きく見開いたのだった。
そして、片手で広い額を抑えると、柄にもなく彼は困ったように深いため息をついたのである。
「私は国へ帰れと言ったはずだ・・・・」
「おや・・・何もそこまで迷惑がらずとも良いではないか?」
彼の言葉尻に、聞き覚えのある女性の声が重なった。
それは、一切自国訛りのない流暢なリタ・メタリカ語。
その起源が蒼き魔狼にあると言われるロータス一族。
このロータス一族は、その忠誠心と力量を歴代のリタ・メタリカ王に買われ、公爵として貴族の称号を与えられていた。
それは、私兵を持てるほどの大貴族であり、この家の出の者は大抵、宮廷でも高い地位に就いている。
古の昔から自在に魔力を操るロータス一族の中にあって、数十年に一度しか現れないといわれる、たぐいまれなる強力な魔力を持つ者、それが大魔法使い(ラージ・ウァスラム)と呼ばれる術者である。
そして、数十年ぶりに一族に誕生した大魔法使いこそ、スターレット・ノア・イクス・ロータス、彼であった。
男性であるにも関わらず、時折美しいとさえ形容される雅な顔立ちをどこか鋭く歪め、蒼いローブを翻し城の離宮へ続く長い回廊を、ゆっくりとした歩調で歩いていたスターレットの背中に、不意に、誰かが息せいて声を掛けてきたのだった。
「スターレット様!!」
それは、よく聞き慣れた少年の声。
蒼銀の髪を揺らしゆっくりと背後を振り返ると、その銀水色の瞳に飛び込んできたのは、明るい茶色の髪と澄んだ青い瞳を持つ、十六、七歳の少年の姿であった。
彼は、ロータス家の当主つまりスターレットの父に拾われた奴隷の子で、現在はスターレットに仕え、日々彼から魔法を学んでいる者。
その名をウィルタール・グレイと言った。
「ウィルト?どうした?」
怪訝そうな顔つきをするスターレットを見やりながら、ウィルタールは、息を整えつつも焦った顔をして言うのである。
「た、た、大変です・・・・!あの、その!あの方が!あの方が城に・・・!エストラルダの・・・・・!!」
「エストラルダ・・・・?まさか、ラレンシェイか!?」
彼の言いかけた言葉の先を察して、スターレットは、いつもは冷静沈着な表情を驚きに変えて、その銀水色の両眼を大きく見開いたのだった。
そして、片手で広い額を抑えると、柄にもなく彼は困ったように深いため息をついたのである。
「私は国へ帰れと言ったはずだ・・・・」
「おや・・・何もそこまで迷惑がらずとも良いではないか?」
彼の言葉尻に、聞き覚えのある女性の声が重なった。
それは、一切自国訛りのない流暢なリタ・メタリカ語。