神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
『まぁいいさ・・・それより、早くアノストラールを見つけなければな・・・・あやつの気配が消えるなど、尋常な事じゃないのは確かだ。
風の精霊が、あやつの居場所さえ伝えてこないのは、どう考えてもおかしい』
『気配が消えたのはアノスだけじゃないわ、ラグナ・ゼラキエルの魂を持ち去ったあの闇の者の気配も・・・・!?』
 そう言いかけて、驚愕の表情でサリオが虹色の大きな瞳を見開いた。
 そして、綺麗な薄紅色の唇を僅かに震わせたのである。
『気配が・・・・動いた!?』
『なに?』
 不意に、シルバの紫色の隻眼が戦人の出で立ちを持ち、閃光の如く鋭利に閃く。
サリオは少し上ずったような声で言葉を続ける。
『・・・・王都に向かって・・・これは、あの魔物の気配じゃない・・・ゼラキエル!?』
『・・・遂に、動き出したか・・・・』
 本来なら、穏やかな印象を与える精悍で端正な顔をいつになく厳(いかめ)しく歪めて、シルバは確認するようにそう呟いた。 
 金色の美しい満月が荒涼たる大地を照らし出すその夜、闇の住人達との戦局はにわかに激しく動き始めた・・・・

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