神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
とたん、いつもは沈着冷静なスターレットの雅な顔が、いつも共に在(あ)るウィルタールすら見たことのない、激しい怒りの表情に歪んだのである。
深紅の両眼が、爛と鋭利に細められた。
そんな彼の姿に、ウィルタールは、驚愕して思わず肩を揺らした。
未だかつて、これほど激昂(げっこう)した彼の姿を見たことがあっただろうか?
年若いウィルタールには、その怒りの真意がどこにあるのか、全く見当もつかず、半ば唖然として、青い瞳でまじまじと敬愛する主人の横顔を見つめすえたのである。
そんなウィルタールの視界の隅に、不意に、朱色の衣を翻した長身の青年の姿が飛び込んできた。
「お前、完全に頭に血がのぼったな?」
足音も立てずにその場に現れた青年のやけに落ち着いた声が、疾風を纏うスターレットの背中にそう言った。
口を半開きにして呆然とするウィルタールが、慌てて青い瞳を上げると、そこに若獅子のような栗毛の髪を虚空にたなびかせた魔法剣士ジェスターが立っている。
彼は、金色の大剣アクトレイドスを肩に担ぐようにして、スターレットの傍らに歩み寄ると、鋭くも冷静な緑玉の視線で真っ直ぐにその雅な横顔を見る。
スターレットは、僅かに彼を振り返り、鋭い表情のまま怒りを押し殺した静かな声で言うのである。
「ジェスター、【鍵】たるお方を頼む・・・・私はあやつを追う」
「・・・・まさか、お前がそこまでムキになる程とは、な?」
ジェスターは、燃え盛る炎のような美しい緑玉の両眼で、どこか愉快そうに微笑った。
「あの女性(にょしょう)は、本来、このような事には巻き込んではならなかったのだ・・・・巻き込んだのは、他でもない、この私だ」
びゅぅんと彼を取り囲む疾風が唸りを上げた。
深紅の両眼が爛と鋭利に煌くと、彼の雅なその姿は、そのまま疾風にかき消されるようにその場から消えて行ったのである。
「ス、スターレット様!!」
もはや、呼び止めようとしたウィルタールの声はスターレットには届かない。
ゼラキエルを追って遠ざかる彼の気配に、驚愕したまま戸惑って、取り残された形になったウィルタールは思わずジェスターの顔を見たのだった。
そんな彼に、その燃えるような緑の眼差しを向けながら、ジェスターは相変わらずの口調で言うのだった。
深紅の両眼が、爛と鋭利に細められた。
そんな彼の姿に、ウィルタールは、驚愕して思わず肩を揺らした。
未だかつて、これほど激昂(げっこう)した彼の姿を見たことがあっただろうか?
年若いウィルタールには、その怒りの真意がどこにあるのか、全く見当もつかず、半ば唖然として、青い瞳でまじまじと敬愛する主人の横顔を見つめすえたのである。
そんなウィルタールの視界の隅に、不意に、朱色の衣を翻した長身の青年の姿が飛び込んできた。
「お前、完全に頭に血がのぼったな?」
足音も立てずにその場に現れた青年のやけに落ち着いた声が、疾風を纏うスターレットの背中にそう言った。
口を半開きにして呆然とするウィルタールが、慌てて青い瞳を上げると、そこに若獅子のような栗毛の髪を虚空にたなびかせた魔法剣士ジェスターが立っている。
彼は、金色の大剣アクトレイドスを肩に担ぐようにして、スターレットの傍らに歩み寄ると、鋭くも冷静な緑玉の視線で真っ直ぐにその雅な横顔を見る。
スターレットは、僅かに彼を振り返り、鋭い表情のまま怒りを押し殺した静かな声で言うのである。
「ジェスター、【鍵】たるお方を頼む・・・・私はあやつを追う」
「・・・・まさか、お前がそこまでムキになる程とは、な?」
ジェスターは、燃え盛る炎のような美しい緑玉の両眼で、どこか愉快そうに微笑った。
「あの女性(にょしょう)は、本来、このような事には巻き込んではならなかったのだ・・・・巻き込んだのは、他でもない、この私だ」
びゅぅんと彼を取り囲む疾風が唸りを上げた。
深紅の両眼が爛と鋭利に煌くと、彼の雅なその姿は、そのまま疾風にかき消されるようにその場から消えて行ったのである。
「ス、スターレット様!!」
もはや、呼び止めようとしたウィルタールの声はスターレットには届かない。
ゼラキエルを追って遠ざかる彼の気配に、驚愕したまま戸惑って、取り残された形になったウィルタールは思わずジェスターの顔を見たのだった。
そんな彼に、その燃えるような緑の眼差しを向けながら、ジェスターは相変わらずの口調で言うのだった。