夏色の初恋を君にあげる
『雅ちゃんとお近づきになるために決まってんじゃん、ばーか。高野姉と付き合えば、雅ちゃんと接点作れるし。雅ちゃんさえゲットできれば、姉なんて即ポイよ』
頭の中で、自分自身を追い立てるようにあの嫌な声が鮮明にリフレインする。
……違う。由良くんはそんなことする人じゃない。そんなの分かってる。
……でも、私の心に根を下ろしたトラウマが、由良くんによって傷つけられることを必死に拒んだ。
好きだからこそ怖い。
もしかしたら雅と近づくために利用されていただけなんじゃないかって――。
「……っ」
次から次へ押し寄せる黒い不安に心が張り裂けそうになって、いても立ってもいられなくなった私は逃げるようにその場から駆け出した。
胸に抱えたお弁当箱のことは、すっかり忘れていた。