夏色の初恋を君にあげる
「意識ははっきりしてなかったけど、保健室を出て行く後ろ姿は覚えてた。あなたを見つけた時、一目で分かった」
「あ……」
――思い出した。
去年の夏、たまたま保健室の横を通りかかった時に、ドアが不自然に少しだけ開いていることに違和感を覚えて室内を覗いてみたのだ。
すると手前のベッドの前に佇む男子の後ろ姿があった。
それは隣のクラスの藤宮くんで、彼はベッドで眠るクラスメイトの有栖さんを愛おしそうに見つめているようだった。
その眼差しからは藤宮くんの優しく切実な想いが伝わってくるようで、そんな絵になる光景に心を奪われかけて。
だけどふと、私の視線は奥のベッドの方へ吸い寄せられていた。
白いカーテンが風でわずかに揺れた瞬間、隙間から、そこに横たわる男子が苦しげにジャージの胸元をきつく握りしめている姿が見えたのだ。
なんとなく不安が頭をよぎり近寄ってみると、やはりベッドで眠る彼は、体調を崩して苦しんでいるようだった。
だから私は大急ぎで自販機でスポーツドリンクを買い、午後の体育で使うために持ってきていたタオルとシーブリーズを持ってきて、軽い処置をしたのだ。
あの時、彼はずっと目元に腕を乗せていたから顔もよく分からなくて、まさか由良くんだとは思いもしなかった。