女を思い出す時
「おじゃま~~!!」

元気な声がした。
真美がいなくなって この家は本当に静かになった。

「いらっしゃい!!」

恒彦が錬を抱っこして玄関に立っていたから

「錬 おいで。」
可愛い孫を 抱き上げる。

いい香り・・・・・
真美が 私を分娩に立ち会わせてくれて
本当に嬉しかった。
私は 分娩のつらさを知らない。

「私 出産のつらさをわからないから
何の役にも立たないけどいいの?」

「そんなの望んでないよ。
だって経験あったって 今苦しいのは私だもん。
のんママの存在が必要なの。
だめ?やだ?」

真美を思わず抱きしめる。

「ありがとう こんな私を頼りにしてくれて。」

「私にはのんママが 産んだママより
本当のママだよ。」

嬉しかった。
夫の一番にはなれなかったけど
真美の一番にはなれた。

錬が生まれてきた時 その貴重な時間を
感動を分け与えてもらえたあの日の事は
今も忘れられない。

錬という 血のつながらない孫だけど
こんなに愛おしい存在を
こうやって胸に抱かせてもらえる感謝は
夫や真美に何度礼を言っても足りない。

「パパは?」

「まだなのよ。珍しいわね。」

今日は 夫と真美にとっては大切な
年に一度の日。

「ママ 錬ね 歩くの上手くなったよ。」

家族三人で 母親に手を合わせる。
今日は 命日・・・・・・・。

「のんママ すごいお花綺麗ね。
どんどん腕あげてる。プロみたい!!」

この日は大作を作って飾るのが
私の供養の形にしていた。

「嬉しい~~。ママさん
喜んでくれるかな。」

「うん!!」

動き回る錬を追いかける真美を見ていると

「のんママ えらいですよね。」

恒彦が 花を見ながらつぶやいた。

「え?」

「いや 俺 こうやって命日三回目だけど
人間出来てるなって 感心してる。」

「私?」

「真美も言ってた。
私がのんママなら この日が一番嫌いだって。」

私は美しい笑顔で微笑む元妻を見つめた。

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