女を思い出す時
「ただいま。」

いつもならば 定時で帰宅してくる夫が
残業で帰りが遅くなった。

「ごめん みんな待ってたな。」

私はいつものように夫から 鞄を受け取った。

「まささん遅いから 錬が寝てしまったわ。」

「すまない。
どうしても人に任せられなかったんだ。」

珍しいな。
どんなことがあっても この日だけは定時帰宅なのに。

「パパ 遅いから!!」

「ごめんごめん!!」
スーツの上着を慌てて 脱いで錬のところへ行った。

「どうしたの?いつも絶対すぐ帰ってくるのに。」

「どうしてもパパじゃなきゃダメだったんだ。」

真美も何だか腑に落ちない顔をして
夫を見ている。

その視線をずらそうとしてる
私はそう直感した。

「錬~~ごめんな~~。」

「まささん 手洗って
食事してしまって。」

「紀香ごめんな。
今年も立派な 花飾ってくれてありがとう。」

「ううん。
これが私の供養だから気にしないで。」

いつもなら家族そろって食事をして
落ち着いた頃から 書斎で 真美とビデオを見る。

毎年恒例の流れだけど 今年は二時間押し

「泊って行くんだろう?」

「うん 明日土曜日だし。」

食事をする夫を 遠巻きにして見ていた。

毎年この命日を過ごすたびに 夫との距離を感じていた。
故人を想い出す夫を見ながら
その状況に対して理解を示す自分が

夫への想いが 愛ではないと言う事を知らされる。

だから理解を示す私を 他人が理解不能というのは
最もなことだった。

夫が一番愛してるのは 元妻

そして私が今でも愛してるのは 翔だと・・・・・

夫以外の人を愛してもいいんだって
この命日でまた都合よく納得したりする。

同じビデオをこの人は何回見るんだろう。
夫も私と同じ

忘れられない人がいる。

その気持ちは よくわかるから
私は理解のある妻を 演じていられるのかもしれない。
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