女を思い出す時
「なんか うちに用?」

低い声に振り向くと ひげ面をした
背の高い男の人が立っていた。

「あ あの翔くんのクラスメイトで
大野 紀香と言います。」

不愛想な顔をしていた男が急ににこやかになった。

「ああ 翔のクラスメイト!!
まさか 彼女かい?」

「あ そう・・・・なんです。」
答えづらかったけど そう返事して頭を下げた。

「いつも翔がお世話になってます。
父親です。」

そう言うと男はにっこり微笑んだ。

「おとうさんですか!?」

翔から父親の話は聞いたことがなかったけど
でも母親も妹も何となくしか
わからなかったから 

優しい顔をしているその男を信じ込んだ。

「はじめまして。」

「翔は今 出かけてるんだけど。」

「出かけてる?」

「どうしたの?」

「めずらしく学校休んだので心配して。」

「あいつは 連絡しないで
休んだのか。」

「それで どこへ?」

「バイト 新聞配達行ってるよ。
体調悪かったみたいでね 学校に連絡するように
言っておいたんだけど バイトにはいったんだな。」

「そうだったんですか
よかった。」

ホッとした。
バイトに行けるなら大した事はなかった。

「もう帰ってくるよ。
アイツの部屋で 待ってるかい?」

「いえ・・・。」

「いいよ 散らかってるけど。
翔の話も聞きたいし 自分出稼ぎに行ったりして
留守にすること多くてね 大学の話もあって
今 そんな話をしてるんだけど
なかなか難しい年ごろでね 男同士って言うのも
けっこういろいろあるんだよね。」

父親はそう言うとため息をついた。

「勉強できるんでしょ?アイツ。」

「はい すごいです。」

「さすが俺の息子だな。」
後から 後からだった
父親の割には 若いその男の事を
後になってから 義理の父親だと知った。

その時は 翔の父親にいい印象をもってもらいたい
進まない進学の話の橋渡しをしたい

そんな甘い考えだったんだ。
私は 父親に言われるがまま その家に入り
恐怖の時間が始まったのだった。
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