女を思い出す時
華やいだ気持ちになったのは
もう思い出せないな。

翔と一緒にいるときは毎日華やいでいた。

もうずいぶんと こんな気持ちになった事なかった。

真美の結婚式と錬が生まれた時とは
また違う・・・・・

自分が女だったって思い出したようだった。

待ち合わせの店に夫が来たのは 五分後。

店員に連れてこられた夫が私を見て
怪訝な顔つきになった。

「どうした?」

その顔がおかしくて 笑った。

「どうしたって まささんの今の顔
おかしくて。」

私は笑いが止まらない。

「いや 朝の紀香とえらい違いでさ。
なんかあったの?」

「ないよ。あ~おもしろい。」

夫はメニュー表を私に渡して
このコースでいい?と聞いた。

「うん。」
何でもいいの こういうこじゃれた店はわからない。

「誘ってくれるのもビックリだし。」

「そうでしょ?きっとそうだと思った。」

夫の言動がなぜかおかしくて
私は笑いっぱなしだった。

「紀香がそんな笑うなんて珍しいな。」

「そう?だってまささんが
おもしろいから ウフフ・・・・。」

端から見たら 素敵な夫に お洒落した妻
幸せそうに見えるんだろう。

確かに幸せだと言えばそうだけど・・・・・。


「パーマしたのか。」

「そうマダムにしてって言ったの。」

「それはまた美容師泣かせだな。」

グラスを持って 乾杯した時だった。


「あれ 部長!!」
テーブルの横に スーツ姿のカップルが立って声をあげた。

「おお!」
夫がその男性の方を見て 立ち上がった瞬間
視線が女性に一瞬とまったのを見逃さなかった。

「奥様ですか?」
夫の部下らしい男性が私に会釈した。

「主人がお世話になっております。」

私も立ち上がって頭を下げる。

「部長 花田さん知ってますよね。」

「あ・・・知ってる知ってる。」
少し慌てているようだった。

「紀香 俺の部下の 竹田くんと・・・・・
会社の取引先の・・・・花田さん・・・だったね?」


女性をそう 紹介した。

「花田 恵梨香です。
矢吹部長さまにはいつもお世話になっています。」

どこかで見た顔だった。

「そうなんですか。
おふたりはデートですか?」

私はわざとに そう言葉をかける。

女のカンのようなものと
相手から発せられる敵意が 突き刺さった。

「付き合ってるのかい?」
少し上ずった声の夫。
私は そんな夫を見るのは 初めてだった。

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