女を思い出す時
「おはようございます。」

「おはよう。」

「体調はどう?」

「ぼちぼちかな。」

翔がなんの病気なのかはわからない。
ただ私は不謹慎にもどうかこの病気が
治らないで永遠にここにいて欲しいって

そう願っていた。


そんな挨拶程度 ほんとに挨拶程度を
交わす日々が続いていたけど

いつも翔はベッドの中から顔を出すだけ。

「翔 ちょっとやせた?」

「そう?寝てばかりだからな。
病院のごはん まずいし。」

「患者さんみんなそう言うわ。
奥さんに差し入れしてもらえばいいよ。」

奥さん・・・・

そう言えば最近 見かけないな。


聞きたい 奥さんのこと・・・・・
翔と顔を合わせて挨拶するだけで満足だったのに

人間って欲深い

もっともっともっと
翔に踏み込みたくなる。

空白の時間を知りたくてたまらない。


「若くて綺麗な人だよね奥さん。」

ほらとうとう踏み込んだ。

「まぁね・・・・。
俺の自慢の女だからね。」

聞かなきゃよかった。
自慢の女か。

罰が当たった。
翔を知りたいってことは
傷つくことなんだって 

「うらやましいな。
旦那さんにそんな事言われたいわ。」

明るく勤めて明るく言葉を返す。

「紀香のご主人だってそうじゃん?」

思いかげない返しだった。

「うちの旦那様ね・・・・
いい人だけど自慢の女だなんて
言ってくれないよ。
他の女の人には言うけどね。」


無言の時間が流れた。

「あ・・・ごめん
言葉に困るよね 気にしないで。」

翔のゴミ箱のゴミをカートに移す。


「翔 ゴミ少ないよね。」

「紀香様に ご迷惑かけられないからな。」

空気が和んだ。

「明日は私休みだから・・・・・・。」


鼻の奥が痛くなった。
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