女を思い出す時
「どうせ抜けるんだけど
こうやって迷惑かけるからさ。」

私の頭の中は混乱している。

「そんな顔しないで。」

翔が私をのぞき込む。

ドキン ドキン・・・・・
この胸の高鳴りは ときめきか

それとも真実を知る怖さか。

「会いたくなかったな。」

翔がため息をついた瞬間 涙がこぼれた。

「まさかこんなところで紀香に会うなんてな。」

「翔?」
声が震える。

「ほんとは治療なんてするつもりも
なかったんだけどさ。
あいつが泣くから・・・・・・。」

あいつ・・・・・

「奥さん?」

「・・・・うん・・・・。」


そうだった。
翔にはきれいな奥さんがいたんだった。

「抗がん剤かなりきついんだよね。」


抗がん剤・・・・・・

翔の病名と 翔の口から出た
あいつ・・・・・・


私のショックは激しかった。

「とりあえず今月一杯で退院するから。
それまではここにいるけど
紀香は紀香の生活を大切にして。
俺の事は昔の友達で。」

冷たい横顔だった。

「友達でもいいの。
ここにいる間は・・・・こうやって話してくれる?」

「うん。」
少し困惑したような顔。


「ごめんな。
心配かける事になっちゃったね。」

私は激しく首を振った。


翔を失いたくない。
こうやって話すだけでいいってそれだけでいい

そう思ってたのにどんどん私は
欲張りになっていく。


「・・・な・・・ないで・・・。」

声がかすれた。

「ん?」

翔が私をまたのぞきこんだ。

「早く仕事戻らないと
悪かったな・・・・ほらもう泣くなって。」

枕元からティッシュを二枚引き抜いて
静かに涙をぬぐってくれた。

その手を私はつかんだ。

「死なないで・・・・・
翔まで違う世界へ行かないで・・・・・。」

「そのつもりで治療してるよ。」


翔まで・・・・
夢中になって口走ったけど
翔は何も言わなかった。


そうだよね あいつのためにも
翔は生きて行かないとだよね。

< 77 / 77 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:18

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

悲恋~歌姫HARUHI~
Via/著

総文字数/39,195

恋愛(その他)106ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
教えて・・・ どれだけ長く一人の人を愛したら 神様は、恋を結んでくれるのでしょう・・・。 どれだけ熱く見つめれば 彼は想いに気づいてくれるのでしょうか・・・。
夫婦ごっこ
Via/著

総文字数/178,235

その他346ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「大浦主任の奥さま いつも主人が お世話になっております。」 「主人の方こそ  いつもお世話になって…。」 私は大浦 恒浩の 妻をしている。 でもそれは……本当の妻じゃなくて 雇われ妻……。 夫は他の人を愛している……。 そんな雇い主の夫を 私はいつしか愛し始めていた……。 契約違反の一方通行な愛を隠し 上手く演じる 夫婦ごっこ………………。 PS・ 温かいレビューをくださったみなさんに 感謝します~ありがとうございます!!
奥様のお仕事
Via/著

総文字数/151,005

恋愛(純愛)296ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「私のところで 働きませんか?」 居場所を失った私の手を 優しくとって微笑んだ彼に 引き寄せられるように ついてきた私 「あの 仕事って何をすれば………」 「上手くやってくれれば 時給はアップするよ」 あの時の 優しい微笑みは 氷の微笑みと化して 意地悪な 雇い主に 翻弄されながら 「そ……そんなこと…………」 ドキン ドキン ドキン 「これって 奥さんの 仕事の一つだよね」 絶対服従の 業務命令に 甘く切ないボーナスが加算されて  胸キュンで スキルアップが加速する  ❤ ❤ ❤ 業務内容は 奥様のお仕事 ❤ ❤ ❤ †ぴな† 様  聖凪砂様  レビューありがとうございます!!!

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop