甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
樹さんが優しく微笑む。

私も口をきゅっとすぼめて微笑み返し頷いた。

「つらくなった時は一人で我慢しないでいつでも連絡してほしい。僕にできることはそれくらいだから」

「はい、ありがとうございます」

そう言いながらも、いつも助けてもらってばかりだと思う。

私が樹さんのために何かしてあげたことはあったかな。

これから、返していきたいけどできるんだろうか。

この木のように寄り添っていかなくちゃ。どちらか一方だけに負担がかかったら倒れてしまうもの。

「私も樹さんのためにできることがあったら何でも言って下さい」

太い木の幹を見つめながら自分の気持ちを伝えた。

彼はくすっと笑うと、私の肩を抱き寄せて言った。

「凛は僕のそばにいてくれさえすればいい。それだけで十分」

「そんな。なんだかいつも支えてもらうばかりで申し訳ないです」

そう返したけれど、体中が感動で震えていた。

そばにいてくれさえすればいい、だなんて……。

どんな愛の言葉を並べられるよりも、自分の全てを包み込んでくれる愛を感じた。

私は、これから先どんなことがあっても彼から離れない。この木に誓って。

「そろそろ行こうか」

「もう少しだけこの場所にいてもいいですか?」

「ああ、もちろん」

樹さんは頷くと、私が見上げる枝葉を彼もまた目を細めて見上げた。











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