甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「彼女もよくがんばったよ。あと一か月向こうで入院して、その後日本に転院してくるらしい。経過がよければ半月ほどで退院して普通に生活ができるそうだ」

「よかったね、ぷーすけ。もうすぐ瀬戸さんと一緒に暮らせるわよ」

そう言いながら、胸の奥がぐっと詰まる。

そうか。

ぷーすけは瀬戸さんの元へ帰っていく。

ぷーすけとの生活もあと少しなんだ。

当然のことだし、そんなことわかってたはずなのに胸が苦しい。

「ぷーすけと離れるのは寂しいね」

そう言うと、樹さんはコップに入ったミネラルウォーターを飲み干した。

「ぷーすけがいなかったら、今こうして樹さんのそばにいられなかったかもしれません」
 
ぷーすけの無邪気な丸い目を見つめていたら思わず泣きそうになる。

「そうだな。ぷーすけが凛に一目惚れしなかったら僕と凛との関係も今とは違っていただろうね」

ぷーすけとの初めての出会いから今日までの日々が走馬灯のように蘇る。

樹さんとの思い出と重なるぷーすけの思い出は私にとってはかけがえの無い時間。

「ぷーすけの世話が落ち着いたら私もトリマーの勉強だけに集中できていいです」

「凛……」

もうちょっとでこぼれ落ちそうになる涙がぐっと堪えた。
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