甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「そんな表情されたら抱きしめたくなる」

正面に座る彼の腕が伸びてきて私の右手をそっと握りしめた。

「僕はぷーすけの代役にはなれない?」

「何ですかそれ?」

私の気持ちを察してそんな冗談を言った樹さんに噴き出す。

ぷーすけが同時に「ワン!」と鳴いたのを引き金に二人で顔を見合わせて大笑いした。

きっと大丈夫。

二人でいれば、どんなことも乗り越えられる。

ずっと二人でいるために私もがんばらなくちゃ。

どんな時も前を向いている彼といたら、自分も前を向いていられる。

数時間前の田丸さんのことはかなりショックだったはずなのに、今はもうこんなにも笑っている。樹さんと一緒じゃなきゃあり得ないこと。

「ずっと凛を支えるから、君もいつも僕の手を握っていてほしい」

「はい」

いつまでも恥ずかしい気持ちは抜けないけれど、一生懸命彼の目を見つめて頷いた。

これからもずっと一緒にいたい。

どんなことがあっても。
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