甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
湯気の立つ温かいコーヒーを頂く。

彼の淹れるコーヒーはどちらかというとアメリカン。

たまに濃いコーヒー飲んだら胃が痛くなることがあったけど、彼のコーヒーは何杯飲んでもしんどくならなかった。

「今日は天気もいいし穏やかな海だから、かなり沖まで行けそうだな」

「前に連れていってもらった、360度水平線みたいな場所に行きたいです」

「そうだね。じゃ、そこを目指して行こうか」

私は笑顔で頷き、カップを傾けた。

この前連れてもらった見渡す限り水平線だった二人きりの海の上。

彼に愛をささやいてもらい、初めてお互いを名前で呼んだ場所。あの日から私は愛し愛される甘い気持ちの素晴らしさを知った。

私にとってずっと忘れられない大切な海。

コーヒーを飲み終えると二人で甲板に出た。
潮風がやさしく吹き上げる。

広い甲板にはテーブルと椅子が設置されていた。

甲板から見える海原には、次々と出航していくヨットや船が見える。

「僕らも出航しようか」

「はい」

私の手を優しく包む彼の手を強く握り返した。
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