甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
自分が勇敢だなんて思ったこともなかった。

安友さんと話していると、新たな自分に気づかせてもらうような気がする。

それが本当かどうかはともかく、そんな風に思ってもらえたことは素直に嬉しかった。

誰かの役に立ってるなんてこと、人生であまり感じたことがなかったから。

ほどなくして到着したタクシーに乗りこみ、安友さんに別れを告げる。

もう二度と会わないかもしれないのに、安友さんは「またね」と言って笑顔で手を振った。

家に戻ると、ぷーすけは玄関の扉のすぐ前で座って待っていた。

そして私を確認すると、「寂しかったよー」と言わんばかりにペロペロと私の手を舐める。

「ごめんね、遅くなって」

そう言って抱き上げたら、私の顔中舐めまわすからくすぐったくて思わず笑ってしまう。

こんなにも私を必要としてくれてるなんて、ぷーすけって本当にいじらしいし愛おしい。

だけど、このぷーすけは誰にも懐かなくて間宮さんも手を焼いていたんだよね?

そんなこと私には信じられないけれど。

ぷーすけを抱いたままリビングに入りソファーに腰を下ろす。

一気に体が重たくなりソファーに沈んでいくようだった。

さっき安友さんの家であったことがまるで夢みたいに感じる。

私、一人で安友さんを助けることができたんだ。
最初は無謀と思えたことだったけれど、行ってよかった。
安堵する気持ちと達成感が心地よく私の中で波打っていた。

忙しい中、どうして間宮さんがこの仕事を続けているのか、ぼんやりとその輪郭が見えたような気がしていた。

ぷーすけの背中を撫でながら、ふと安友さんにトリマーに向いてるって言われたことを思い出す。

スマホで【トリマー】と検索した。

まだまだ私の知らない世界がいっぱいある。

間宮さんを好きになってから、一気にその世界が私の前に広がっていったような。

私のこの現在進行形の気持ちと一緒に。


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