甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
そこにはあの優しい笑顔を湛えた間宮さんがいた。

ラフな白いTシャツとジーンズを履いて、大きなスーツケースを転がしながらゆっくりと私たちの方に歩いてくる。

疲れているだろうと思ったのに、微塵もそんな様子はない。

小麦色に焼けた肌が木漏れ日に反射するかのようにキラキラして見えた。

間宮さんは私たちのいるベンチの前まで来ると、私に軽く頭を下げる。

「今回は本当に助かったよ。2週間ありがとう」

「いえ」

あんなに待ちわびた間宮さんにそんな言葉しか返せないのかと情けない気持ちで、自分の顔をタオルで半分覆ったまま頭を下げた。

ぷーすけは久しぶりの間宮さんとのご対面に興奮して「きゃんきゃん」鳴いてその足元に飛びつく。

間宮さんは足元のぷーすけに視線を向けると、

「おっ。ぷーすけ」

と言って目を見開き、すっと抱き上げた。

「俺もずっと会いたかったよ」

そして、ぷーすけの頬にキスをする。

ドクン。

ぷーすけになりたい。

なんて、思ってる自分が馬鹿らしくて、だけどそれは本心で、二人がじゃれあっている姿をいつまでも見ていたいと思っていた。

抱いているぷーすけの頭を撫でながら間宮さんは私に尋ねる。

「この2週間、困ったことはなかった?」

困ったこと。

……ではないけれど、安友さんのことがふと頭をよぎる。

でも、あれは勝手に私が電話を取ってしまったからそういうことになってしまったわけで。

もう万事問題なく済んでいるからわざわざ言うこともないだろう。

「はい、何もありませんでした」

「そう?ならよかった」

間宮さんは私に視線を向けて目を細めたまま頷いた。

「もしよかったらこれから食事でもどう?今回のお礼の話もしたいし」

タオルを頬に当てたまま間宮さんの顔をじっと見つめた。

こういう時、「はい」っていうべき?

それとも遠慮すべき?

でも、こんな機会、もう二度と巡ってこないかもしれない。



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