図書館
プロローグ
毎日毎日、本を読みながら、
ただ時間が過ぎるのを待ち続けている。

おれは本を1Pを読むのにだいたい1分かかる。
文字の多い本はそれ以上かかるし、
文字の少ない本ならもっと早く読むこともできる。
これでもずいぶんと早くなった。

おれは生まれてずっと
本なんて読んだことが無かった。
頭だって悪かった。
もちろん今だって良くなってはいないと思う。

頭が悪いから、
読んでも分からない本がたくさんある。
でも、おれは一文字も飛ばさずに読み続ける。
だって、もしかしたら、
いつか分かるようになるかもしれないだろ?
それに飛ばして読んだら、
それは読んだって胸を張っては言えないからな。
だからおれは一文字も飛ばさずに読み続けるんだ。

読むのが早くなるのは悲しいことだ。
1冊読んでも、2冊読んでも、
まだ日が暮れない時がある。
仕方が無いから3冊目を開く。
おれは1P1P数えて読んでいる。

60P読んだということは、
だいたい1時間経ったということだ。
いや、もちろんそうとは限らない。
60P読むのに1時間以上かかることもあれば、
30分もかからないことだってあるんだから。
それはさっき言ったよね。
文字が多い本と少ない本があるからだ。

でも、おれは60P読んだら、
とりあえず1時間経ったと考える。
そして後に残された時間を思う。

それは真っ暗な穴の中みたいな時間だ。
自分の手も見えないような、そんな時間だ。
ひたすらに壁を撫で続ける、そんな時間だ。
目を開けたときのほうが暗さを感じる……
でも、おれはいつか必ず光が差すことを信じている。
それは必ず。
それは今日かもしれない。
それは未来なのかもしれない。
でも必ず。
いつか光が差すことを知っているから、
今日もおれは本を広げる。

1P 1P数えて読み続ける。






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