身ごもり政略結婚

だから余計に出かけられず、千歳はずっとお休みしている。


こんな姿の妻なんて嫌だろうな……。


覇気のない顔をして、おまけにヘアスタイルや洋服に気を使うこともできない。

今は少しずつ家事をこなすだけで精いっぱいだからだ。


昼近くになり、座っていることもつらくなってきたのでベッドに入った。

でも、寝たまま千歳に電話を入れる。


「もしもし。メール見た?」


相手は父だ。


『おぉ、春川に教えてもらってやっとな。この練り切り、なかなかいいじゃないか』


あれから私は和菓子の新作のデザインをいくつか考えて、父にメールで送っている。

大雅さんは焦らなくていいと言っていたものの、アルカンシエルとの商談を控えた今は重要な時期だ。

それに、せめてこういうことで役に立たなければ、彼に見放される気がして怖くてたまらない。


家事もできず、疲れて帰ってくる大雅さんを癒すこともできない。
妻としてはなにひとつとして役に立てないからだ。
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