身ごもり政略結婚
「専務は社長からずっと結婚を急かされていましたが、頑なに拒否していました。それなのにある日突然、結婚してもいいと思っている女性がいると言い出したんです。それが千歳が閉店すると知った日でした。専務は過去に女性のことで苦い想いをしていて、結婚はしないの一点張りだったので、私も驚きました」
苦い想い?
そんなことは初耳だ。
聞きたいけれど、聞いてもいいのだろうか。
ソワソワしていると、麻井さんは眉を上げる。
「友人としてならお話しますよ? 前にも言いましたけど、専務には幸せになってほしいですから」
「えっ、あっ……はい」
聞きたいことがバレてる。
「専務は大学を卒業してすぐの頃、結婚を考えるような女性がいて、一年間真剣に交際をしていました。でも仕事人間でしたので、デートをキャンセルすることも多かった。ただ、それを彼女も受け入れていて、それでこの人なら結婚してもうまくやっていけると思ったみたいなんです」