身ごもり政略結婚
まさか結婚を考えた女性がいたなんて。
彼ほどの人なら不思議ではないけれど。
「いざプロポーズして互いの両親と顔あわせをするという段階になったとき、彼女の化けの皮がはがれました」
「化けの皮?」
彼は眉尻を下げてうなずき、続ける。
「偶然電話をしているのを聞いてしまったらしいのですが……。どうやらその女には本命の男が別にいて、その男と画策して須藤家からお金を引き出す計画だったとか」
「え……」
そんなのひどすぎる。
「顔あわせまで済んだら、専務に別の女性を近づけて写真にでも収め、不貞行為をでっちあげて裏切られた女を演じる。そうやって慰謝料を巻き上げるつもりだったらしいです」
体調が上向いていたはずなのに、頭がクラクラしてきた。
「一年ですよ? 真剣に彼女のこと考えていた専務は、それから周りに気を許さない男になってしまいました。プライベートの時間があるとつらいのかますます仕事に没頭するようになって、おかげでエール・ダンジュの業績は伸びたんですけどね。友人としてはちょっと……」