身ごもり政略結婚

それは俺が、エール・ダンジュを支えてくれているパティシェたちに敬意を払っているのと同じだった。


俺がわざと積極的に関わろうとしないせいか、結衣は時々寂しそうな顔をする。

しかし次の瞬間、ニコッと笑顔を作り暗くならないように努めている彼女が、どんどん不憫になった。


結衣と一緒に生きていきたい。
彼女を幸せにしたい。

そんな強い気持ちが自分の中に芽生えているのを否定できなくなっていた。


俺の好きな食べ物をリサーチして本まで買い込み料理を研究していたり、エール・ダンジュのことをもっと知りたいのか、こっそり様々な情報をネットで調べていたりするのに実は気づいている。

俺に直接聞けばいいのに、聞きにくいのだろう。

それも、俺が話しかけにくい雰囲気を作っていたからだ。

そうやって線を引いていないと、彼女にのめり込みそうで怖かった。


俺の過去なんて、結衣には関係ないのに。
きっと結衣は、あの女とは違うのに。
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