身ごもり政略結婚

「須藤専務のことは、奥さまよりずっと前からよく存じあげております。仲がいいんですよ、私たち。仕事を超えた関係なんです」


そう口にした彼女の視線が鋭く光り、私を突き刺した。

突然攻撃的になった彼女の態度に驚いて目が点になる。


『仕事を超えた関係』って……男女の仲だと言いたいの?


大雅さんは婚約者に裏切られてから恋人といえる女性はいなかったはずだ。

でも、体だけの関係という可能性はある。


「私がお誘いすれば、すぐに来てくださるはずです。須藤専務は賢い方ですから」


大雅さんはこの仕事を得るために、彼女の誘いにのるということ?
これは宣戦布告なの? 


「それでは準備がありますので失礼しますね」


赤池さんは私を横目で見つめ、意味深な笑顔を残して離れていった。


もしも彼女の機嫌を損ねたら、千歳の和菓子は不採用になるの?

父や春川さんが心を込めて作ったはさみ菊も、正当に評価されないまま彼女の感情ひとつで決まるの?


そんなのあんまりだ。
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