身ごもり政略結婚

「もしもし」
『結衣。決まったよ。千歳の和菓子の勝ちだ』
「ホントに? ……よかった」


閉店寸前まで行った千歳が、大雅さんの力で完全によみがえった瞬間だった。

胸に熱い想いがこみ上げてきて、それしか言えない。


すると、それすらわかっているかのような彼は、『千歳はもう大丈夫だ』と付け足した。


「はい。大雅さんありがとうございました」

『こちらこそ。千歳の和菓子に出会えて……結衣に会えて、本当によかった』


深いため息交じりの声を吐き出す彼もまた、この結果に感動していると伝わってくる。

それから次の会議が控えているということですぐに電話を切ったが、私はすぐさま千歳へと向かった。


「お父さん!」


裏口から飛び込むと、春川さんがキョトンとしている。


「結衣さん、久しぶりだね。平気なの?」


調理場では餡を炊いている真っ最中だった。


「大丈夫です。それより……」


父も大きなしゃもじを握る手を止めて、唖然として私を見つめている。
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