身ごもり政略結婚

ひと晩悩みに悩んで私が指定したのは、ベビーグッズ売り場。


「それでいいの?」と大雅さんは目が点になっていたけれど、今はやっぱり赤ちゃんのことで頭がいっぱい。

しかも、まだ出産後の準備をなにもしていないのでちょうどいい機会だ。


久しぶりの外出に疲れすぎてもいけないと、昼食をとってから出かけることになり、私たちはまず東郷(とうごう)百貨店に向かった。


この百貨店はエール・ダンジュの商品を扱う数少ない店舗のうちのひとつで、業界二位だった売上が最近トップになったとニュースをにぎわせていた。

エール・ダンジュと同じように、新しいことへの挑戦がいつも話題になるデパートだ。


久々にこんなに人があふれる場所に来たせいか、圧倒される。


「結衣。こっちおいで」


大雅さんはお腹が他の人にぶつからないように、私の腕を引っ張りサポートした。
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