身ごもり政略結婚
「ここは私の隠れ家的なお店でして。仕事を忘れて気兼ねなく羽を伸ばせるんです」
私の向かいに座った彼は、優しい笑みを浮かべている。
「そうでしたか」
「よろしければ、デザートの盛り合わせでもいかがです?」
「はい」
それから彼はデザートとコーヒーを注文してくれた。
店員が去ると、彼は待ち構えていたかのようにどことなく色気漂う薄い唇を動かして話し始める。
「突然で驚かれましたよね」
それは結婚の話?
「えぇ、まあ……。須藤さんのような方なら、結婚相手もよりどりみどりではありませんか?」
私は思いきって感じたことを話す。
「そんなことはありませんよ。実は私、エール・ダンジュの跡取りでして」
「えっ!」
おしとやかに振る舞おうと気をつけていたのに、大きな声が出てしまい口を押さえる。
専務というだけで驚愕していたのに、御曹司?
将来は社長になるということでしょ?
頭の中でもうひとりの私が叫んでいる。