身ごもり政略結婚
千歳を助けてくれるのだから、本来ならこちらが恐縮すべきところなのに。
少々心配げな表情を見せる父と麻井さんを見送ると、須藤さんは私に視線を合わせた。
「突然お誘いして申し訳ありません」
「いえ……」
まずい。ふたりきりになった途端、緊張が増してきて息が吸えない。
「場所を移したいのですが、よろしいですか?」
「はい」
どうやら先ほどの車で父を送ってくれたらしく、タクシーに私を乗せた須藤さんは、どこかのお店に行くように告げている。
彼はレディファーストが身についているという感じで、そのような扱いをされたことがない私は、ずっとおどおどしていた。
タクシーが向かったのは、料亭から二十分ほどの高級イタリアンレストラン『フルジェンテ』。
大理石の床と眩いシャンデリアに迎えられて、彼とは住む世界が違うと感じる。
しかも落ち着かないほど広い個室に案内された。