身ごもり政略結婚

「上手だね」


私が褒めながら近づいていこうとしたとき……。


「えっ」


なんと、愛結のほうから私をめがけて歩いてきた。

一歩、二歩、三歩……。


「危ないっ」


五歩目で体勢を崩したので手を伸ばして抱きとめたが、これが彼女の初めての歩みだった。


「すごいね。歩けたよ!」


私は胸がいっぱいになってしまい、愛結を抱きしめて声を震わせる。

子供の成長がこんなにうれしいとは。


「パパにも見せてあげられるといいね。きっとすごく喜ぶよ」


今すぐにでも電話で知らせたい衝動を抑えて、それからしばらく彼女の満足そうな顔を見ていた。



大雅さんが帰ってきたのは二十時半すぎ。

私は愛結を抱っこして玄関に向かい、床に下ろした。
すると彼女は私につかまり立ったあと……。


「はっ、愛結!」


大雅さんめがけて足を踏み出したので、彼は目を丸くしている。

初めて歩いてからそれが気に入ったらしく、あのあと何度も果敢にチャレンジして、もう五歩は確実に歩ける。
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