身ごもり政略結婚
それから美しく飾り付けられたデザートがやってきたが、とても手をつける気にはなれない。
私は自分の気持ちを落ち着けるためにコーヒーを口にした。
どうしたらいいのだろう。
私が何食わぬ顔をしてこの結婚を受け入れれば、父はこれからも千歳で和菓子を作り続けられる。
しかも、エール・ダンジュのような大きな会社のうしろ盾があれば、経営についてもこの先安泰だろう。
職人としては一流でも経営者には向いていない父には渡りに船だ。
それに、苦しいときも一緒に頑張ってくれた春川さんも、路頭に迷わずに済む。
でも……困惑しかない。
私には結婚を考えるような相手はいない。
だから支障はないけれど、『あなたに愛は求めないし、私も愛しません』とはっきり断言されたも同然で、跡取りを生むためだけに嫁ぐの?
そりゃあ明治時代くらいまでさかのぼれば、親が決めた相手と結婚するのが当たり前だったかもしれない。
でも、今はそんな時代じゃないでしょ?
そんなことを考えて顔が険しくなる。