身ごもり政略結婚
「もちろん、結婚するからには大切にします」
まるで仕事の契約を交わすかのように淡々と告げられても戸惑うばかりだ。
「ひとつ、お聞きしてもいいですか?」
「はい、なんなりと」
「千歳の――父の和菓子をお好きなのは本当ですか? それともビジネス上の〝好き〟ですか?」
父の和菓子にビジネス価値を見いだしただけなら、スパンと断ろう。
父が大切に作ってきた和菓子を軽く扱われたくない。
そんな気持ちで尋ねる。
「それは本当です。最初は単に千歳さんの和菓子が好きで通っていましたから。ですから、アルカンシエルから和菓子の検討について打診を受けたとき、真っ先に思いついたのは千歳さんの和菓子です。社内では他に『柿庵(かきあん)』も候補に挙がりましたが、私がプレゼンして競り勝ちました」
「柿庵……」
柿庵というのは全国各地に店を出している有名和菓子店。
これまた高級ラインで、内閣総理大臣賞を受賞したこともあり、国内外に名を馳せている。
一店舗だけで細々と続けている千歳とは規模も違うし、太刀打ちできるような店ではない。