身ごもり政略結婚

「緊張しないでください。もしいい返事をいただけるなら、夫婦になるんですから」


その自信に満ちあふれた言い方は、私が結婚を承諾するとわかっているかのようだった。


「そう、ですね。夫婦になるんですから」


もっとしっかり向き合って話そうと思っていたが、私はそう口にした。

彼は一瞬目を大きくしたがなにも言わない。

しかし、しばらく進み赤信号でブレーキを踏むと、顔をこちらに向けた。


「それが、答えですか?」
「そうです。私がそれしか選べないとわかっていますよね」


ちょっと棘のある言い方だったかもしれない。

別の出会い方をして彼をよく知ったら、もしかしたら好きになったかもしれないのに。

今は彼のことをずるいとしか思えない。


「結衣さんはとても聡明ですね。おっしゃる通りです。でも、不幸には決してしません」


不幸にはしないけど、幸せにもしてくれないのだろう。
普通なら『幸せにします』と言うところだ。
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