身ごもり政略結婚
「これは新作ですか?」
「は、はいっ」
秋色について尋ねられ、緊張が走る。
「この秋色という和菓子は、中はさつまいも餡です。もちろん、餡は千歳の技術を詰め込み滑らかに、そしてさつまいもの風味は決して損ねぬように砂糖の量に気を配っています」
私が説明を始めると何度もうなずいている。
彼はいつも熱心に説明を聞いてくれる。
千歳のこだわりについて知ってもらいたいがため、つい説明に熱がこもる。
「上に散らしたようかんの葉は、秋になり色づき始めた山々を想像しながらデザインしたものです。赤や黄色に色づいた景色を見ると、四季のある国に生まれてよかったと心から思うんです。そんな気持ちをのせてあります」
他のお客さまにこれほどくわしい説明をしたことがない。
けれど彼には以前『もっと聞かせて』と促されたことがあり、それからは和菓子一つひとつに込めた思いを包み隠さず話すようにしている。