身ごもり政略結婚
「着替えてくる」
「はい。ありがとうございました」
お礼を口にすると、彼は小さくうなずいてリビングを出ていった。
それから十分。
スーツに着替えて戻ってきた彼は、私が用意した朝食をテーブルに自分で運んで食べ始める。
私はソファに座り、彼が切ってくれたトマトをふたつ食べたところでフォークが止まっていた。
もう食べられない。
でも、せっかく切ってくれたのに悪いな。
そんなことを考えながら、もうひとつチャレンジしようとフォークに刺したところで、大雅さんが立ち上がりこちらに歩いてくる。
「匂い、ダメか?」
「いえっ、大丈夫みたいです」
いつもの定位置ではなくソファから一番遠い席で食べていたのは、もしかして気分が悪くなるかもしれないと思って?
席を移ったところでそれほど変わらないのに、配慮してくれたことがうれしい。
「なんでも遠慮せずに言え」
彼はフォークを持つ私の手を持ち、トマトを自分の口に運ぶ。