身ごもり政略結婚
「結衣はなにか食べられる?」
「ト、トマトを」
本当はそれほど食べたい気分ではなかった。
昨日ほどひどくないとはいえ、オムレツを焼いていたらちょっとムカムカしてきたし。
匂いに相当敏感になっているみたい。
でも、さっきトマトを見ていたら食べられる気がした。
そんなに好きじゃないのに、どうしてだろう。
「結衣が丸かじりは……さすがにな」
彼はふっと笑みをこぼしてキッチンに戻っていく。
そして、包丁を取り出してトマトを大雑把に切ってお皿に移すと、私のところに持ってきてくれた。
「ドレッシングいる?」
「いえ、このままがいいです」
フォークを差し出されて瞬きを数回。
まさか、こんなことまでしてくれるとは。
妊娠が発覚してからの彼は、以前より私をいたわってくれるようになった。
わりと亭主関白で、朝食のときも新聞を読みながらテーブルに料理が並ぶのを待っていたし、家事を手伝うこともなかったのに。
まあ仕事が忙しすぎて夜も遅いし、そんな時間もないけれど。