ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

なんとか撮影を終えたご褒美にと、激短距離をタクシー使って帰社。

メールの確認と部長への報告、それだけ終えたら、今日はもう帰ろう、そう決めてフロアに入ると――すぐ、いつもとは様子が違うことに気づいた。


みんな自分の仕事そっちのけで席を立ち、数人で固まって興奮気味にささやき交わしながら、ある一点……会議室の方を、遠巻きに見つめてるんだもの。

誰かお客様でも来てるんだろうか。
有名人かもしれない。
またインタビュー取材かな。
このざわつきぶりだと、テレビ局でも来てるのかも。

深く考えることもなく、自分の席へカバンを置いた。
「お疲れ様。坂田がこの時間に戻ってるなんて珍しいね」

向かい側に声をかけると、私の姿を認めるなり、彼は幽霊でも見るみたいに目をむいた。
「お前、なんで帰って来るんだよ」

「……は? だって今日は早めに戻るって、ちゃんと……」

皆まで言わせず、坂田が腰を浮かせた。
「すぐに帰れ! つか、とにかくここから出てけっ」

「はぁ?」
何言ってるの? って首を傾げていると。
舌打ちとともに立ち上がった坂田が、ぐるりとデスクを回り込む。

そして、訳が分からず立ちすくむ私の腕を掴み、カバンを押し付けた。

「ちょ、ちょっと……一体なんなの?」

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