ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

コンサートホールのような、厚みのあるドア。

その取っ手を両手でつかんで、ぐっと引く。


ザッと空気が動いて、その隙間からぶわりと、花の香りがあふれてきた。
とっさに、はっと息を止めてから――そろそろと呼吸を繰り返してみる。

……大丈夫みたい。
あの時みたいな反応は起こらない。


これは香水じゃないな。中に生花でも飾ってあるのかも、なんて考えながらさらにドアを開け、身体を滑り込ませた。


井上さんの話によると、今日のパーティーは立食スタイルらしい。

人に紛れていれば、ライアンにさりげなく近づいて話しかけることだって……と思ってたんだけど……。


照明を絞った薄暗い会場を見渡すなり。

盛り上がっていた勢いが、瞬く間にしゅんとしぼんでいった。

たくさんの人で混雑している上……
飲み物やフィンガーフードを提供するテーブル、豪華な花を生けた花瓶やアレンジメントまで置かれていて。
真っすぐ進むことさえできない状況だったから。

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