ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
あぁ……ダメだ。
ダメなのに。
胸の奥底で密かにずっと、張り詰めていた何か。
それが、雪解けみたいにぐずぐずと、崩れていくのがわかった。
気づくと、両頬が熱い涙で濡れていて。
「っ……ぇっ」
嗚咽が止まらなくなってしまう。
「飛鳥」
名前を呼ばれて、しゃくりあげながら、情けない程ぐしゃぐしゃになった顔をあげた。
逆光のせいか、その瞳の色はいつもより暗く、闇を溶かしたような色で。
そこに見え隠れする切なげな光が、私の胸を衝く。
「ライア――」
「だだだだ大丈夫ですかっ!?」
司会者の男性、それから会場のスタッフ。
数人が駆け付けるのが見えて、ライアンが体を起こした。
途端。
「うっ」と声を漏らして、右肩を押さえてしまう。
「申し訳ありません! 会場の不手際です! 今すぐ救急車を呼びますので!!」
「いえ、それには及びません。大丈夫ですよ。結構頑丈な方ですから」
笑いながら言った彼は、すっと私の前へ移動した。
その大きな背中で私をかばい、会場の視線から遮るように。